GoogleのThink with Googleという素敵なコンテンツプラットフォームで、Calvin KleinのCMOであるMarie Gulin Merle氏が「Welcome to the End of Digital Marketing」(デジタルマーケティングの終焉)というタイトルの興味深いスピーチをしていました。語っていることに目新しいことはないですし、各論が紹介されているわけではないのですが、落ち着いた語り口にあたたかな眼差しで、とてもよくまとまったインサイトを語ってくれていていいなと思ったので、ラフに訳してみました。

出典(オリジナルの動画は下記リンクから。Googleのページです。再生時間20’20″):

Think with Google – Marie Gulin Merle (CMO at CK, CDO at PVH)

■CKでの役割?

ブランドマーケティング、プロダクトマーケティング、コンシューマーインサイト、データ、リテールストア、ビジュアルマーチャンダイジング、COMS、CSR

■なぜデジタルマーケティングの終焉?

トラディショナルとデジタルをわざわざ分けるのがミスリード。ユーザーはそういう行動をしない。オンラインで検索、オフラインで買う。その間、モバイルはいつも携帯している。ビデオ視聴や、検索はカスタマージャーニーの中で不可欠だし、また、担当を分けてしまうことで企業内にサイロが生まれる。

■誰が推進者となるべきか?CEO/CMO?

CEOはチームや組織のメンバーに対して変化を知らせる役となるべきで、CMOはCFOと共にユーザーに対して実際の働きかけを行う。もちろんCHROの協力が必要だし、CIOはどのCxOにとっても重要な存在。


コンシューマージャーニーの変化をどう捉えているか?

①発見フェーズ=検索。ROPOという行動。Reserch Online, Purchase Offline。顧客の50%は購入前に行っている。
P2Pアドボカシーの重要性。
③顧客はすぐにでもアクセスできることを求める。
Any time. Whatever. Wherever

カスタマーとのエンゲージメントをどう作るか?

①Keep acquring。ファンやメンバーの獲得を続ける努力
2回目の購入をしてもらう努力。
③cross-sellingやディープセリングを通じてロイヤルティを高める努力
離脱をいかに食い止めるかとリテンションの努力。
これら4つの目的を達成するために必要なものの一つはテクノロジーであり、もう一つはDCO (Digital Contents Optimization)。常にOptimizationの努力を続けること、差別化を行い、何がワークして、何がワークしないかを探る。

どうやってコンテンツを作り続けるか?

ヒーローコンテンツをどう作るか。消費者と大きなブランド価値をどうつなげるか。圧倒的な量、圧倒的な速さ、高い質でパーソナライズしながらコンテンツを送ることが差別化の肝。


たくさんのタッチポイントがあるという今日のマーケティング状況で、さらに個々人にRelevant(関連性の高い)な情報をどう送り続けるか?

それは人々の注目を引く戦い。瞬間瞬間で個々のユーザーに向けてどうRelevantな情報を届けるか?ブランドリフトを追うのか、セールスリフトを追うのかというところの評価基準のギャップが生まれる。エンゲージメント、過去の行動、コンバージョンといった指標のコンビネーションを考えることが重要。そして、正しいコンテンツを、正しいタイミングで、正しいターゲットに届けること。


マシンラーニングやビッグデータをマーケターはどう扱ったらいいのか?

マーケターは生身の人間であって、直感の動物でもある。ひとつは日々の繰り返し業務を自動化することに用いること。もうひとつは効くものと効かないものを見極めることなどに用いる。人間がデータを意味のあるものにする。テクノロジーをどう使いこなすことができるかが肝心。either/orの関係ではなく, “and~”で捉える。そしてクリエイターはテクノロジーを恐れてはいけない。直感とはデータ、そしてインサイト、さらにテクノロジーによって拡張されるもの。マーケティングとはアイディア。最後は人間


パーソナリゼーションを追いかける一方でプライバシーの問題は?データを利用することへの信頼をどう作っているか?

ブランドや企業がコミットしなければならない。CKでは3つの強力なコミットメントを指標としている。
透明性=データをどう使うかについて
安全性=高いスタンダードを課すこと
アカウンタビリティ=想定外のことが起きた場合の説明責任。


大切にしているマーケティングトリックやライフハックがあるか?

20年前に最初のメンターからもらった言葉が日々のマントラに。”Come to work like it’s your first day”というもの。決して楽をしないこと。全部わかったような気にならないこと。成長すればするほど新しい世代に耳を傾けて、好奇心と謙遜というマッスルを鍛え続けなさいという教えだった。


消費者のブランド離れが顕著になっていることについて?

デジタル時代に生まれたブランドはブランドを売り込むことよりも、商品そのものを売ることにフォーカスしているが?→答えは再びYes, and…になる。大事にしているもうひとつのマントラがある。”消費者はブランドとつながりを持つ。でも、最終的には買うものは商品だ。”つまり両方を売る努力が必要。YoutubeのCKチャンネルには、様々なプロモーションのビデオもあれば、感情的なエンゲージを狙ったコンテンツもある。新商品の紹介もあって、What’s newからWhy newまで配信している。


ファッションブランドは日々、革新されるデジタルイノベーションを採り入れて行っているのか?

どの業界も例外ではない。どの業界でも壮大な変化が起きている。それはブランドの視点で起こっているのではなく、消費者の視点で起こっている。だから、消費者が変わればブランドはついていく。ブランドの選び方、愛し方、作り方がこの、この5年、10年で全く違うものになっている。だからこそエキサイティングであり、常に変わり続けなければならない。

競合ブランドのキャンペーンで感銘を受けたものは?

もちろん。いつも他のブランドのキャンペーンから学んでいる。そして消費者が何を作っているか、UGC (User Generated Contents)もたくさん見る。彼らがブランドについて何を語っているかなど。ひとつあげればセリーナウイリアムスがスーパーボウルでやったクレージーキャンペーン


ストーリーテリングやデザインシンキングといった手法はこの先、マーケティングに影響を与えると思うか?

すでに影響を及ぼしている。ストーリーを作るペースはこの数年大きく変わった。以前は大きなブランドなら数ヶ月間をかけていくつかのイメージを作り上げたけど、今では、毎日作らないといけない。だからリードタイムにはデザインシンキングが必要。テストして学ぶ、を繰り返すメンタリティが必要。そして私たちのブランドの意味、ブランドの価値を知らなければ、毎日物語を作ることはできない。チャレンジングだが、面白さでもある。


デジタルの成熟性を保つためには、誰とパートナーになるべきか、また何人必要か?

昔はクライアントとエージェンシーという関係性で物事を進めていたと思うが、今では、パートナーのエコシステムが必要。外部にはクリエイターがいる、グーグルがいる、テクノロジーがあって、エージェンシーのクリエイティビティも必要。そして内部では、ブランドTechのようなチームがいてIT部門とマーケティング部門をつなげてくれる。共通のゴールのために異なった専門性を統合していく。内部と外部を合わせたエコシステムが必要。
カスタマーデータプラットフォームはどういう役割を果たすか?CDPは我々の活動の中心的な存在になっていくだろう。まだ、バズワードぽい概念ではあるが、これまでデータポイントはあちこちにたくさん存在しているので真実の中心になりうるものが必要。全方位で顧客のことを把握できるような存在が。カスタマージャーニーは変わり続け、カスタマービヘイビアは進化し続ける。リアルタイムで俯瞰できることが必要。

目を見張るマーケティングの変革をしているが、ビジネスマネジメントが大きく変わっていく中で、敏捷性やスピード感を持って決断を下していくためのガイドをしてもらえないか?

まだ十分じゃないと思っている。2つのことを引用したい。①どこかに行こうと思ったら歩き始めろ。というのがひとつ。そして大きな絵を描き続けること。最初の3ケ月の目標は何か。半年でのゴールは何か。1年後の到達はどこになるか。約束の地はどういうものなのか、明日はどうなっているのか。短期と長期のビジョンを同時に見ること。そして②私たちは空の上にいて、飛行機に搭乗していながら飛行機を作っているのだと思えいうこと。世界を俯瞰しながら想像し続けるという考えが大事。

(了)


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