夕方から外灘に出てライトアップされた租界時代の西洋建築のビルを見る。プロムナードにのぼって、あちら側の浦東新区にぱらぱらと立ち始めた高層建築を眺めてから、南京東路に戻り和平飯店に入る。

中華レストランではやはり蛇料理を食べてもらわないといけない。

ウェイトレスがずた袋に入った蛇を見せに来る。蛇は中でうごめいている。一同確認する。しばらくして唐揚げになった蛇が出てきて一同は恐々と口に入れてみる。味は鶏肉を濃くしたようなものなのでまずいという人はいない。けれど、蛇の肝の方はいけない。カップ1杯の白酒の中でつぶして飲む。生臭さが口の中いっぱいに広がる。こちらは大抵の人がうえっとなる。

食事の後は1階に降りてオールドジャズバーにお連れする。ドラムのロールはもたつき、演奏全体も時にふらつく。老年爵士楽団。今晩も観光客で盛況。

ホテルの玄関でお客様をタクシーに乗せてから、後続のタクシーを待つのだが今晩はなかなかやってこない。少し歩いてから流しているタクシーを拾うことにする。

(二)

いつもは簡単につかまるタクシーがその日はなかなかつかまらない。10分くらい歩いてから、ようやく1台つかまえることができた。しかし、大丈夫か?と思うくらいおんぼろでよれよれ。天津ダイハツだ。

当時の上海のタクシーはフォルクスワーゲンの合弁会社である上海大衆の車がほとんどだったが、天津ダイハツのものも少し走っていた。天津ダイハツの車は小型な上に、製造年が古いからか運転が荒いからなのか、ぺらぺらの板金、ソファにもクッションがないことも多く、乗っていてすごく心もとない気持ちにさせる車だ。

一瞬躊躇したが、まぁいいやと思って行き先を告げる。タクシーの運転手はおしゃべり好きな人も多く、大概、日本人か?何やってんの?中国の女性ってどう思う?というような他愛もない会話をすることになる。中国語の練習になっていい。

外灘を後にして中山東一路、東二路と進んでいく頃には租界風の建物もまばらになり殺風景でごちゃごちゃした街並みになっていく。街灯や照明もなくなり暗くて寂しいものにある。灯りといえば車、タクシーライトのほのかにオレンジ色がかったものが行き来しているだけ。

(三)

住んでいたところまでは半分も来ただろうか。中山南路を過ぎて車はかなり大きな交差点に入っていった。その時。乗っていたタクシーの左から別の車両が突っ込んでくるのが見えた。

v’英rfhb9&ウ8れgbぢgbv’えいおwgゔぉいえwgvべいおw’gゔぇおうぃgv8え98gゔぇw0”ほwqhjんcゔぇrhゔぉいえhゔぃおえwhbゔぉいうぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

交差点の中心で2台は衝突した。

うわーーーーーーーっと声を上げた。そして自分の乗っていたタクシーのフロントウインドウが割れてこなごなになるのを見た。どこからともなくちりやほこりが舞い上がっていた。

しばし。多分、1分くらい。放心していた。わかっていたのは2台共、急ブレーキを踏んでいたこと。どうやら生きているみたい。不思議にどこもぶつけなかったからブレーキは功を奏したに違いない。

うおーとかぐわーとかいったような奇声を発して運転手が出て行った。窓は割れてどうやらボンネットはめくれているけどその程度ですんだみたいだということが徐々にわかってきた。こんなおんぼろぐるまなのに?

ちえーと言って相手側の運転手も出てきた。相手の車はひとまわり大きい大衆社製の車だ。そして、お互いの胸ぐらをつかんだり、どつきあったり、罵り合いが始まった。

(四)

ぼーっとそのやりとりを見ていると、男が走り寄ってきてドアをどんどん叩いた。

男:「おい、早く出てこい。何やってんだ。おい。」

と叫んでいる。あっと思って外に出た。ドアは簡単に開いた。外に出てみると結構たくさんの車が止まっていてギャラリーとなって2人の運転手のやりとりを見ていた。

男「大丈夫か?出てこい。早くここを離れよう。」

僕「いや、お金払わないと。」

とっさに答えたのがこれだ。自分はつくづく日本人だなと思った。

男は両手をぶんぶんと振って主張する。

男「こんな事故で君を危ない目にあわせたんだから払う必要ないだろ。早く行こう。」

と言った。うーむ。確かに。説得力がある。男は俺が送っていくよと言って自分の車まで誘導した。え、タクシーの運転手?と、なんとなく思ったけど、まぁ、いい。とにかく帰りたいや。

幸いなことにどこにも怪我はないようだった。少し走るにつれてなんだか人ごごちがついてきた。

運転手「今日はアンラッキーだったな。日本人か?」

僕「まったくね。うん、日本人だよ。」

運転手「ああいうめちゃくちゃな奴が多いから気をつけろよ。俺もこないだ高架道路で逆走してくる車に肝を冷やした。」

僕「逆走の話しは前にも聞いたよ。狂ってるね。」

笑。笑。笑。

出典 marcas-horii.blog.so-net.ne.jp

(五)

7, 8分ほどで上海体育館が見えてきた。あそこをぐるっと回れば寄宿先のシェラトンホテルに着く。なんだかほっとする。タクシーはメインエントランスのところに着いた。お金を払おうとすると、運転手が聞いた。

運転手「さっきはもともとはどこから乗ったんだ?」

僕「へ、外灘だけど?」

運転手「前のタクシーに払わないで来たよな。」

僕「そうだね。」

運転手「そしたらさ。外灘からの料金もらっていいか?」

僕「・・・・・。」

運転手「だって、どうせ払うはずのものだろ?」

僕「・・・・・。」

やっぱり、なかなか美談はないなー(笑)。

確かに若干上乗せしても損はないと思ったけど、ここは応じてしまうと上海のためにならない(!)と思い込んで、きっぱり断った。メーターの金額通りのお金を渡すと運転手はちっ、と舌打ちしてこちらが降りるや否や、小日本(日本人の蔑称)!と叫んで急発進で出て行った。

ふぅ。

でもこれはこれでいい思い出の一つでもある。謝謝儂、上海。

最新の更新を
プッシュ通知で購読しよう