香港島の西、ケネディタウンという素敵な名前の街に住んでいる。

2014年のクリスマス明けに地下鉄(MTR)が開通した。今では商業地コーズウェイベイまで15分で着く様になったが、それまでは忘れ去られたかの様にひなびた場所で築50年は優に超える低層アパートの唐楼、公団住宅、老人ホーム、そして車の洗車、修理工場ばかりの街だった。

それでも海に面し、山にも囲われていて外国人などが好んで住み始めていたが、地下鉄の開通を機に一気に人気スポットになった。瀟洒なマンションが建てられる様になり、洗車・修理屋さんは次々と店を畳み、その使い勝手のいい広々としたスペースにモダンなディスプレイのバーやレストランがどんどん店をオープンして行った。

イタリアン、フレンチ、タイ、ブリティッシュ、アイリッシュ、オーストラリアン、タイ、ベトナム、中東、ありとあらゆる世界のレストラン。ケバブ、タコス、クラフトビール、スイーツ、カフェなどジャンルも豊富。アイキャッチ画像はこのところものすごい人気で敵なしの感があるアラビカコーヒーで、休日になれば朝からカップルや女性客が押し寄せる。

この場所は以前、海鮮料理の老舗があった。とても美味しくて、価格も手ごろなので大人気、いつも満員だった。様子がおかしくなってきたのは馴染みの店員さんがいなくなったなと思った頃。壁にかけられていた味のあった書や絵が、ん?と思う感じのものに変わったり、メニューの内容は変わらないがデザインが変わって、そして味もサービスも目に見えて悪くなった。

オーナーが変わる

香港で飲食店がダメになる典型的なきっかけの一つがこれだ。傍目に見ていると、味、サービスをむやみに落としてしまい、どうして人気を維持できると思うのか不思議になる。残念ながら、閉店してしまい、広い店舗はなかなか借り手がつかなかったが、半分のスペースに流行りのペット向けエクセサイズの店ができた。それからももう半分のスペースにかなり間を置いてこのアラビカコーヒーができた。

家賃を大幅に上げられる

少し大きめのスペースで、商売がうまく行っているお店がある時、閉店してしまうパターンもよく見られる。毎日、朝から夜まで客が絶えることがなく羨ましいほどの繁盛。よく聞くケースは契約の更新に当たって40%, 50%あるいはそれ以上という様な賃貸料値上げを請求されること。お店からすればそれじゃやってけないから出て行くよという残念な判断をしたのだと思う。面白いのは、その後、そのスペースに1年も2年も店子がつかないというケースが頻繁にあるということ。2年も家賃収入がないくらいなら、そこまで値上げに固執しなくてよかったのでは、ましてや広いスペースなのだから関心を持つお店も限られるわけだし、と思うのだがこのあたりの強気さはどうも日本人的な感覚では計り得ないものがある。

オーバースペック

ケネディタウンではこのケースもかなり見受けられるのも特徴的。おしゃれなインテリア、ハイプロファイルなシェフ、ハイソな調度品、高級店の価格。こんなお店が2年以内に店をたたむケースは珍しくない。確かに、この街には西洋人も多い。彼等の多くはかなりの高給取りで家族でいい暮らしをしているから、オープン当初はそこそこの人気を博す。しかし、所詮、香港人の人口の方が多いわけだし、ビジネス街でも観光地でもない場所に外からの訪問をそうそう期待することも難しいだろう。ミシュランを取ったシェフを招請していたレストランもあった。一人当たりが使う平均的な値段は5000円以上だったと思う。駅からも徒歩5分で独創的なメニュー、盛りつけのお店だったけれど長くはなかった。(もちろん、僕もそうそう簡単にいけなかった。笑)

これ以外にも商業地でよくあるのは、ある場所にマカオ風タルトのお店とかタピオカティーのお店がオープンして連日行列する様になると、全く同業のお店が近隣に2つ3つ立つパターン。客を横取りしようという、笑えないパターンだけど、本気でやる。半年も過当競争が続くと体力の無いお店からつぶれていき、最後にはとうとうブームが去ってしまい最初のお店もつぶれてしまうというものだ。これもいつ見てもなんだかわかったようなわからないような話だと思う。

それでも次から次にお店ができては消えて行く

食べるというのは香港人にとっても、とても大事なことの一つだし、ブームには敏感なのでまずはそこそこ流行る。そしてビジネスとしてわかりやすいので出資者も多いのだと思う。どうして長く持たないようなお店がたくさんあるのに、また新しいお店ができるのかという疑問は、どんどんお金を投資する人がいるからということ。仮に長い目で見なくてもそこそこに流行ったところで売り抜けてもいいだろうし、条件が悪くなったら一旦撤退して、また別の場所に進出することを繰り返す、というモデルも確立されているのだ。

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